Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
光感受性物質Hematoporphyrin(HP)は動脈硬化巣に選択的に集積し、病巣の進展と共に特異な蛍光スペクトル変化を示すが、その作用機序については明らかではない。我々は動脈硬化粥腫に集積したHPが脂質と接する膨化したcollagen type IVとの境界面に存在したことに着目した。親水性のHPが脂質の豊富な粥腫に集積することから粥腫中では脂質が単体では無く、変性したタンパクと複合体を形成していると考えた。そこで、粥腫のモデルとして、collagen type IV、phosphatidyl choline liposomeを用いて動脈硬化粥腫に対する光線力学的治療の可能性を検討した。collagen type IVにHPを添加後コレステロール含有liposomeを加えたタンパク脂質複合の凝集状態を検討し、その後680nmのLEDパルスを1時間照射し、HPと複合体の凝集状態を白色光を用いた散乱分光、680nm半導体レーザーを用いた干渉分光のデータ収録、高感度CCDを用いた撮像、観察を行い、更にフーリエ解析によりタンパク脂質複合体の変化を解析した。HPはタンパク脂質複合体の多彩な会合状態に影響を与える。加えて光パルスを照射することにより、タンパク脂質結合状態の変化が観察され、分散状態を表す散乱光も変化した。粥腫中に存在するタンパク脂質複合体はHP添加後の微弱光照射により分子会合状態に変化が生じることで、光情報伝達系を介して蓄積脂質の解消やプラークの安定化に寄与する事が示唆された。