Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
成人T細胞白血病(ATL)の発がんメカニズムの中で、がん細胞側の遺伝子変化はいまだ不明な点が多い。我々は、DNAメチル化が発がんに関与しているのではないかと推測し、ATL細胞に特異的にメチル化されている遺伝子を調べることにした。具体的には、サブトラクション法の一種であるMCA/RDA法を用いて、同一症例のATL発症後の細胞から抽出したDNAと発症前のDNAを比較し、56種類のDNA断片を単離した。次に、単離したDNA領域のメチル化の程度をcombined bisulfite restriction analysis(COBRA)法にて解析し、実際にメチル化が起きていることを確認した。そして実際にメチル化が生じていたDNA断片の近傍にある、遺伝子をBLAST法によって調べ、それらの遺伝子発現をATL細胞株について解析したところ、Kruppel-like factor 4(KLF4)、early growth response 3(EGR3)、Versican、prostaglandin D2 receptor(PTGDR)、beta-2 adrenergic receptor(ADRB2)などの遺伝子の発現がATL細胞株において抑制されていることが判明した。中でも、チェックポイント遺伝子であるKruppel-like factor 4(KLF4)に注目し、アデノウイルスベクターを用いてATL細胞株にKLF4を強制発現させたところ、アポトーシスを誘導した。このことはATLにおいて、KLF4のメチル化が発がんに関与している可能性を示唆する。