Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
1.研究目的現在種々の大動脈弁疾患対して用いられている各種人工弁には耐久性、抗凝固療法の継続、拒絶反応などの欠点が指摘されている。本研究では組織工学を用い、異種細胞外構築を使用した大動脈弁グラフトを作成し、その有用性および臨床応用の可能性を検討している。2.方法と結果健康ウサギより大動脈弁付き動脈グラフトを採取し、0.05%トリプシンで48時間incubateし、除細胞化異種大動脈弁グラフトを作成した。同グラフトをビーグル成犬の腹部大動脈に間置するように移植し(n=15)、さらに、3例に人工心肺下に上行大動脈壁への移植を行った。腹部大動脈移植後4週、12週、24週(各n=5)に儀死せしめ形態学的、組織学的、免疫組織学的検討を行った。12週の一例にグラフトの閉塞と石灰化を認めたが、他のグラフトは全例開存、内皮化して血栓形成はほとんど認めなかった。全例において弁葉構造を確認することはできなかった。組織学的には動脈壁の内膜側に内皮細胞の形成および動脈壁への線維芽細胞の侵入を認め、弾性線維、膠原線維は保たれていた。また、FactorVIII、α-SMA、Vimentinによる免疫組織学的検討では、グラフトにイヌ動脈壁と同様の内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞の発現を認めた。走査型電子顕微鏡による検討では、4週で島状に形成されていた内皮細胞が経時的にグラフト全面に形成されていく像が確認された。人工心肺下に移植を行った3例中2例は周術期に失った。生存例一例については今後検討を行う予定である。3.まとめ以上の結果より除細胞化異種大動脈弁グラフトは自家細胞により部位特異的な細胞の再分布が起こることが確認され、同グラフトの体循環下における有用性が示唆された。一方、今回の検討では弁葉構造を確認することができず、人工弁としての有用性は、他の実験モデルによる再検討が必要であると考えられた。