Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
平成14年度に大脳白質線維の解剖学的描出を行うため、MRIでの拡散強調画像の撮像条件の適正化と、データをoff-lineコンピュータへの転送システムの確立、データ解析ソフトの導入と動作確認ならびに正常ボランティアでの試験施行を行った。これにより正常ボランティアにおける拡散強調画像の取得とオフラインコンピューダでの大脳白質繊維走行の再構成画像を作成することが可能となった。平成15今年度の変更点としては従来使用していたhead coilより性能の高いcoil(センスヘッドコイル)の使用が可能となったため、さらに正常ボランティアの撮像を追加し、新しいヘッドコイルに適した撮像条件の選択を行った。その利点の一つとして、画像解像度の低下なく撮像時間の短縮ができる点であった。このコイルを使用し、正常ボランティア15例において白質繊維画像の作成を行った。得られた繊維画像を三次元表示し、既存の解剖アトラスと比較検討を行い、主たる神経線維の走行との整合性を確認した。脳梁、前交連などの交連線維、弓状束、上・下後頭前頭束、帯状束、および鉤状束などの連合線維、錐体路、視放線などの投射線維などが明瞭に把握できた。錐体路においては延髄での交叉が描出できた。より正確なオリエンテーションをつけるべく2〜4箇所の関心領域を設定して対象繊維の連続性を確認した。当然のことながら主要な連合線維および投射線維を良好に描出させるためには、良好な基礎画像を取得する必要がある。問題点としては撮像時間が比較的長い(取得スライス数によるが5〜9分程度かかる)ため、体動によるmotion artifactが生ずることである。正常ボランティアにおいても3例でこの問題が出現しており、将来症例で施行する際の注意点である。この問題に関する一つの対処法としては、描出したい線維に対象をししぼり、より少ない枚数の撮像でscan timeを短縮することであろう。得られた基礎画像より種々の関心領域を設定して作製した多くの再構成線維画像データを集積し、各主要線維走行における最適な関心領域の設定部位、および大きさを検討した。その線維走行において三次元線維画像の再構成を多方向からの視野で作成し、各線維を最も観察しやすい方向を決定した。これらの過程で撮像から線維の描出までの一連の流れが確立された。