Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
当初計画に従い、1.クラスCβ-ラクタマーゼによる基質加水分解機構-量子化学計算による検討、2.クラスCβ-ラクタマーゼによる基質加水分解機構-分子動力学計算による検証、3.まとめを行った。1.については、前年度までに求めた反応機構における反応のポイントとなる安定構造、遷移状態構造について密度汎関数法計算を行い、より正確な活性化エネルギーを求めた。クラスCβ-ラクタマーゼによる基質加水分解反応における素反応は(1)アシル酵素四面中間体の生成反応、(2)アシル酵素中間体の生成反応、(3)アシル酵素中間体の加水分解反応の3つであるが、密度汎関数法計算の結果、活性化エネルギーはそれぞれ31.1kcal/mol、4.8kcal/mol、30.5kcal/molであった。すなわち、この反応は生体内で起こり得る反応である。2.については、前年度に明らかにしたアシル化反応時の安定構造(反応開始構造、アシル酵素四面中間体、アシル酵素中間体)を酵素活性部位に組み込み、それらの構造を出発点として分子動力学計算を行った。その結果、組み込んだ構造が実際の酵素中で再現された。いずれの構造においてもSer64- Lys67- Tyr150- 基質カルボキシル基- Lys315- (Wat)- Glu272の水素結合(相互作用)系が保たれており、これが反応を安定に進める要因であると考えられる。3.これまでの研究結果をまとめると、クラスCβ-ラクタマーゼによる抗生物質不活化機構は、(1)アシル化、脱アシル化の二段階反応であること、(2)Ser64、Lys67、Tyr150の三残基とそれらを支える水素結合系が必要であることがわかった。
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