Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
神経系グリア細胞の一つであるアストロサイトは、脳の恒常性の維持に重要な役割を果たす細胞である。アストロサイトの分化は、様々な細胞外因子による刺激で促進されることが報告されているが、その中でもインターロイキン6(IL-6)サイトカインファミリーによる分化促進機構が最もよく研究されている。IL-6ファミリーによる分化では、リガンドの受容体への結合に伴う転写因子STAT3の活性化が、アストロサイトマーカーGFAP(グリア線維性酸性蛋白質)の転写を引き起こす。一方アストロサイトの分化は、細胞内cAMPレベルを上昇させる因子によっても促進されるが、cAMP依存的な分化機構は明らかになっていない。ラットC6グリオーマ細胞では、細胞内cAMPレベルの上昇により、アストロサイトマーカー発現誘導や細胞形態変化などのアストロサイト様分化が観察される。そこで我々は、cAMP依存的なアストロサイト分化機構を明らかにするために、C6細胞をモデルとして研究を行なった。その結果、刺激に伴う細胞内cAMP濃度の上昇に伴い、短時間でIL-6の発現が上昇し、その後IL-6蛋白質が培養液中に分泌されることを見出した。さらに、IL-6分泌によってSTAT3が活性化し、その後のGFAPI発現誘導が引き起こされた。つまり、C6細胞におけるcAMP依存的な分化は、IL-6自己分泌によって引き起こされることが明らかになった。また最近、アリルハイドロカーボン受容体(AhR)が、ニューロンの細胞運命決定に重要であることが報告されたが、我々は、AhRリガンドがcAMP依存的なIL-6誘導を阻害することで、C6細胞分化を阻害する機構を明らかにした。これらの結果は、アストロサイト分化調節機構の一部を明らかにするとともに、ダイオキシン類のような神経毒性を持つAhRリガンドが、神経系細胞の分化を撹乱する機構を示すものである。
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