Budget Amount *help |
¥3,700,000 (Direct Cost: ¥3,700,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2002: ¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
|
Research Abstract |
1.現有の磁場コイル(3kG)と真空容器(内直径16cm,長さ200cm)を利用し,温度を600℃程度にまで加熱することのできる銅円筒(内直径8cm,長さ30cm)が真空容器内部に設置されている.この円筒内部にドーナッツ状電子銃が,側壁にナノサイズ分子であるフラーレンC_<60>を昇華させるためのオーブンが設置されている.電子ビームエネルギーは0〜150evの範囲で,フラーレン導入量はオーブン温度調節(0〜700℃)によって制御できる.高エネルギー電子衝突電離によって正イオン(C_<60>^+)が生成され,低エネルギー電子付着によって負イオン(C_<60>^-)が生成される.外部印加磁場を利用した磁気フィルター効果により正負イオンと電子を分離することができる.このようにして,等しい質量を持つ正負イオンのみから成るペアナノ分子イオンプラズマの生成に成功した. 2.ペアイオンプラズマの典型的なパラメータは,プラズマ密度1×10^8cm^<-3>,イオン温度0.5eV,空間電位はほぼ0Vである.すなわちプラズマ中に静的電位構造が形成されておらず,これがペアイオンプラズマの特徴の一つである. 3.宇宙・高エネルギー物理分野において,等質量異符号電荷の電子-陽電子から成るペアプラズマの時空間的対称性が通常の電子-イオンプラズマとは大きく異なるため,その基礎物性について注目されている.しかし,、実験的にペアプラズマの生成・保持・測定が難しいため理論が先行しており,基礎物性について能動的実験検証がほとんどなされていない.そこで静電波動特性について実験を行ったところ,理論的に予測されたイオン音波,イオンプラズマ波は明確に観測された.更にこれらの波動の中間周波数帯域に新たなモードを発見した.正負イオン密度揺動位相差に関しては,イオン音波は同位相,イオンプラズマ波は逆位相,新たなモードはほぼ逆位相になっていることがわかった.密度働が逆位相ということは,強荷電分離状態であることを示唆しており,動印電位構造が形成されることを意味する. 4.フラーレン二量体であるダイマーは炭素系素材として応用上期待されている.触媒を用いた化学的多段階反応法,局所電界印加法,光重合法でもダイマーは形成される.しかし,不安定構造ダイマーであったり,大量合成には向かない手法である.そこで大量合成に向く体積生成を念頭において,ペアイオンプラズマを利用したダイマー直接形成を試みた.プラズマ中に基板を挿入すると,電子加速電圧に依存してダイマーが形成されることを確認したが,その生成量は多いとは言えない.負イオンが電子加速領域に存在すれば負イオンビームが生成されて,正イオン・中性フラーレンとの衝突によりダイマー形成される可能性のあるこどがわかった.効率的なイオン加速機構を更に付加すればダイマー生成量を飛躍的に増加させることが可能になると考えている.
|