Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
ホスファチジルイノシトール(PI)は生体膜の主要なリン脂質の一つであり、高等動物のPIは、他のリン脂質と異なりその90%以上がアラキドン酸を有している。私の研究室ではこれまでに、PIにアラキドン酸を導入する酵素としてLPIAT1 (LysoPI AcylTransferase 1)を世界で初めて同定し、アラキドン酸を含むPI(20:4-PI)およびその合成酵素であるLPIAT1が生理的に非常に重要であることを見出している。私は修士過程において、PIの脂肪酸鎖を規定する新規分子として機能未知分子TMEM68を同定した。TMEM68は線虫からヒトまで広く保存されており、TMEM68の線虫変異体でPIの脂肪酸組成が大きく変わっていること、HeLa細胞でもTMEM68の発現抑制によりPI中のアラキドン酸が減少することを見出している。これらの結果から、PIの脂肪酸鎖を規定するTMEM68の機能が進化的に保存されていることがわかった。そこで私は、TMEM68欠損マウスを取得し、個体レベルでのTMEM68の機能の解明を目指した。TMEM68欠損MEFを用いて脂質組成解析を行ったところ、PIの脂肪酸組成に顕著な変化は見られなかった。また、脳、肝臓、腎臓の臓器のPIの脂肪酸組成の解析も行ったが、アラキドン酸の割合に顕著な変化は見られなかった。LPIAT1など、協調的に機能している分子が存在するのかもしれない。今後は、心臓や骨格筋といったLPIAT1の発現が低いものの20:4-PIを豊富に含む臓器を用いて、TMEM68の欠損によりPIの脂肪酸組成に変化がないか検証を行う必要がある。また、TMEM68欠損マウスでは運動能の低下という表現型がデータベース上に報告されており、この点についても検討が必要と考える。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2015 2014
All Presentation (3 results)