感染病態形成におけるフリーラジカル病因論に関する研究
Project/Area Number |
15019084
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Biological Sciences
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
赤池 孝章 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 助教授 (20231798)
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Project Period (FY) |
2003
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2003)
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Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2003: ¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
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Keywords | 感染病態 / フリーラジカル病因論 / NO / 8-ニトログアノシン / 遺伝子変異 |
Research Abstract |
本年度は、感染病態におけるNOによる核酸ニトロ化反応に焦点をあて解析を行った。すなわち、NOによる修飾塩基である8-ニトログアノシンの単クローン抗体を作成し、インフルエンザウイルス感染モデルや各種培養細胞における8-ニトログアノシン生成を検討した。さらに、8-ニトログアノシンによるウイルス遺伝子変異誘発、および、新規の細胞内シグナル伝達機構について解析を行った。その結果以下の知見を得た。 (1)8-ニトログアノシンの大量有機合成法を確立し、抗8-ニトログアノシン抗体(多クローンおよび単クローン)を作成した。本抗体を用いて、マウスインフルエンザウイルス肺炎モデルにおける、8-ニトログアノシンの生体内生成を免疫組織化学的に解析した。その結果、インフルエンザウイルス感染マウスの肺組織において、誘導型NO合成酵素(iNOS)の発現に伴って、主に、気管支・細気管支上皮細胞の細胞質内に、8-ニトログアノシンが産生されることが分かった。よって、ウイルス感染病態におけるNO生成に依存した新規修飾塩基8-ニトログアノシンの生体内生成を初めて証明できた。さらに、抗8-ニトログアノシン抗体を用いたELISAを確立し、各種培養細胞における8-ニトログアノシン生成を定量的に解析したところ、生理的な濃度のNOにより、細胞内に8-ニトログアノシンが効率よく生成することが明かとなった。 (2)組換えGFP-センダイウイルス(SeV)感染CV-1細胞を8-ニトログアノシンにより処理して、ウイルスのRNAゲノムの変異頻度に与える影響を検討したところ、NOと同様に、8-ニトログアノシンが遣伝子変異促進作用を発揮した。さらに、CV-1細胞培養系において、8-ニトログアノシンにより誘発されるウイルスGFP遺伝子の変異スペクトラムは、マウス感染モデルにおいてGFP-SeV感染肺組織より分離されるウイルスのGFPゲノム変異のパターンと比較的類似していた。従って、NOが8-ニトログアノシン生成を介してウイルス変異を加速することが示唆された。 (3)NO生成を介して産生される8-ニトログアノシンは、ユニークな化学的反応性(レドックス活性)を有していることも分かってきた。すなわち、8-ニトログアノシンは、生体内に豊富に存在するNADPH依存性還元酵素、例えば、P450 reductaseやiNOSを含めたすべてのNOSアイソフォーム(血管型eNOS,神経型nNOS)により活性化され、活性酸素産生をもたらすことが明らかになった。さらに興味あることに、NO産生に依存して細胞内に生成する8-ニトログアノシンは、細胞のヘムオキシゲナーゼ-1の発現誘導を介して強い細胞保護作用を示した。よって、宿主細胞の生存シグナルにNO・8-ニトログアノシンによる新たなシグナル伝達経路が存在することが示唆された。 以上より、感染病巣において過剰に産生されるNOが、病原細菌に抗菌作用を発揮するだけでなく、8-ニトログアノシン生成を介して、ウイルスの分子進化に関与したり、宿主の生存シグナルを制御することにより、感染防御と病態発現に深く関わることが分かってきた。
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Report
(1 results)
Research Products
(12 results)