Research Abstract |
粘膜免疫法は一般的に,粘膜進入型病原体に対して有効であると考えられ,幾つかの従来の注射型ワクチンを粘膜投与型に改変しようという考え方がある.インフルエンザワクチンがその一例であり,また,我々もブタ回虫を利用してそのことを示唆した.更に,本研究課題では,マラリア原虫や日本脳炎ウイルスなど,粘膜面を進入門戸としない節足動物媒介性病原体に対しても粘膜免疫法が有効である可能性を指摘した、即ち,マラリア伝搬阻止ワクチン抗原をモデルとして,経鼻免疫により,三日熱(Arakawa et al., Vaccine21:3143-3148,2003),熱帯熱及びネズミマラリア(投稿準備中),また,組換え日本脳炎ワクチン抗原(投稿準備中)いずれでも感染防御の可能性を示唆した.これらの経鼻免疫により誘導可能な免疫とその感染防御効果には幾つかの特色がある.まず,1)経口投与では免疫応答の誘導が難しいこと,2)注射接種より大量な投与量を必要とすること,3)アジュバントとの併用が不可欠であること,4)CTBなどの粘膜組織運搬体との融合化により効率よく免疫が可能であること,5)また,CTBとの融合により,高度精製の必要性が必ずしもないこと(ワクチン抗原選択的免疫の可能性),などである.以上の結果に基づき,粘膜投与型のアジュバント及びワクチン抗原の高効率発現が,経鼻免疫及び最終的には経口免疫法による感染防御ワクチン開発に重要な鍵を握ることが示唆された.そして,CTB融合型ワクチン及びアジュバント分子作成を効率化できるヘテロ型CTB融合遺伝子の構築に成功した(特願2003-279156).現在,このシステムを利用して,粘膜投与型アジュバント及びワクチンの産生効率及び感染防御能の検討を行っている.また,CTB以外の分子を利用して,抗原提示細胞を標的とするアジュバント及びワクチン運搬分子の構築に関する実験を行っている.
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