Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2004: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
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Research Abstract |
反力デバイスを利用した実験環境として,15年度に知的な学習支援の枠組みであるITSとバーチャルリアリティを結合した学習支援システムVR-ITSの枠組みを設計し,物理の教材を対象として第1のプロトタイプシステムを構築した.具体的には滑車の題材を取り上げ,動滑車と定滑車のモデルをコンピュータ内部に持たせ,VR型の装置である反力デバイス(PHANToM)を用いて滑車の操作が可能なシステムが完成した.これは,知的好奇心を喚起した上で,初等力学の基本的な概念(運動法的式,力とつりあい等)の学習を支援することを目標としている. 一方,16年度は,プロトタイプシステム1を用いて予備実験を実施し,基本的機能の動作と有効性を確認した.また,その知見を基に,基本システムとコンテンツの拡張を行った.具体的には,第2のプロトタイプシステムとして,物体の運動のひとつである鉛直投げ上げの題材を扱うシステムの構築を行った.本システムで学習できる知識には定量的なものと定性的なものがあり,前者は投げ上げに関する定量的な関係を表した基本公式であり,後者は速度の変化などに関する定性的な性質である.本システムでは,学習者が与えられた問題に解答し,仮想実験室を通じて確認するプロセスで進めることを想定している.問題は投げ上げの基本公式から解答が導出できるものであり,初速度は学習者による投げ上げ動作から検出する.すなわち,学習者が問題作成に関与することを意図している.また,工業高等専門学校において,15年度に完成したシステム1(滑車の題材)と16年度前期に構築したシステム2(鉛直投げ上げの題材)の評価を行った.システム1に対して,反力デバイスを用いたシステムと,マウスで同等な操作が擬似的に行えるシステムによる比較実験を実施した.その結果,特に学習態度が積極的な生徒が反力デバイスを使用した場合,記述式問題の成績が実験時も実験後も極めて良好であった.全般にアンケートやビデオなどから反力デバイスに関心を持っている様子や好奇心を抱いている様子も見て取れ,知識だけでなく(重さに対するセンシティビティも含め)感性にも作用する可能性が示された.次に,システム2に対して,反力デバイスの操作感の違いによる学習効果を比較した.学習コンテンツの拡張により,反力デバイスの用途の拡張が可能であることが示されたので,同じ用途における用法の違いの影響を分析した.仮想実験室内の学習者を表した人形の動きと学習者の動作の類似関係は作業効率に影響するだろうから学習効果にも関係するのではないかという点に着眼した.そこで反力デバイスの持つ部位が同じで把持形態の異なるグループで投げ上げ作業を実行しながら物体の運動の問題を解いてもらった.具体的には,実験前の知識が仮想実験室での実験を通じてどう変化するか,速度と時間の定性的関係を選択肢から選ばせることで調べた.その結果,用法について明確な差異はなかったものの実験によって知識が変化した生徒がどちらのグループにも見られた.身体動作を伴った問題作成への関与,主体的に実験条件を制御する中で自分の考えの確認,力覚が刺激となった発想,などに起因したと推察される.反力デバイスは知識を点検する手段となったが,用途と用法については精査する必要があることもわかった.
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