Research Abstract |
1.目的と方法近年,日本におけるメラノーマの発生率が急激に高まっている.メラノーマは4つの病型が存在するが,日本人ではその約50%が外傷の多い足底にできるALM(Acral Lentigenous Melanoma,末端黒子型黒色腫)である.同じ症状をとるものとして日光露光部の顔面にできるLMM(Lentigo Maligna Melanoma,悪性黒子型黒色腫の)が発症する.これら2型が日本人メラノームの約70-80%の発症頻度を占める.一方,欧米人には日光露光部の背部と顔面,四肢等に好発するSSM(Superficial Spreading Melanoma表層拡大型)と悪性黒子型黒色腫(LMM)の発症が多い(80%以上).SSMの発症予後は,LLMとALMの中間である.本研究では,病理組織学的,臨床的に共通する水平/垂直増殖の病型を呈するが,悪性度と外的要因を全く異にするALM, LMMとSSMを3型のメラノーマの進展予後に関する分子疫学的解析をおこなう. 2.結果と意義過去1年間本研究に関し以下の成果を挙げた。(1)DNA microarray解析:ALM5例から原発巣と転移巣を得,DNA microarrayの解析を始めた.8,300遺伝子の転写レベルをこれら症例にて検索し,原発巣と転移巣特異的に発現する遺伝子を5個,7個見出した.現在これらのcDNAからPCR primerを作成しRT-PCRにてその特異性を検索中である.(2)Comparative genomic hybridization/FISH法による検索.これらの手技を用いSSM, ALMを比較した所,DNAのコピー数は,SSMで極めて乏しく,一方ALMでは極めて高く発現されていた.結果として,ALM, SSMとでは,病因的に異なった疾患であり,我々が検索しようとしている遺伝子発現においても著明な差が生じる事が期待出来た.(3)メラノコルチン1レセプター遺伝子の解析:メラノーマ患者41名,正常人または非メラノーマ患者群26名を用い検出できた変異アレルは4種類のみで,そのうちArg67G1nはメラノーマの1例のみに(P=0.43),Ile120Thrはメラノーマの2例,コントロールの1例に検出された(P=0.56).Val92Metはメラノーマ11例(26.8%),コントロール3例(11.5%)で(P=0.14),メラノーマ群がコントロール群の2.3倍であった.Arg163Glnについては,メラノーマ群40例(97.6%),コントロール群24例(92.3%)(P=0.31)と高頻度でみられた.(4)cyclin D_1の免疫組織化学的解析:皮膚原発悪性黒色腫102例,18例(18%)がcyclin D_1が陽性であり発現を示した.Keplan-Meier法による生存曲線でこれら症例を検索した所,95%の信頼区間でcyclin D_1陽性症例と陰性症例間に統計学的に有意な差は認めないが(Log-rank test, p=0.1288),予後との相関傾向を認めた.男女別では,男性(Log-rank test, p=0.0355),女性(Log-rank test, p=0.3047)と男性では95%の信頼区間で統計学的に有意な差を認めた.
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