Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2003: ¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
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Research Abstract |
近年,イミダゾリウム塩系イオン性液体中での有機金属錯体反応が多く報告されるようになってきた.これらの反応ではイオン性液体は単に溶媒として働いているのではなくこのイオン性液体から、含窒素ヘテロ環カルベンが生成し,金属錯体の配位子として働いている可能性が指摘されている.我々は,機能を持った新しいイオン性液体の創製を目指し,配位子としての含窒素ヘテロ環カルベンに着目し研究を行ってきた.すなわち,「これまでにない立体選択性や反応経路」といった現象を見いだすことを目標にまず含窒素ヘテロ環カルベンを配位子として用いた反応の探索を行ない,望みのカルベン配位子を見いだせたならば,その前駆体のイミダゾリウム塩に遡り、対陰イオンの交換を行うことにより新しい反応性や高立体選択性を持つ「イオン性液体」が創製できるのではないかと考えている.本研究課題の初年度である本年度は以下の二つの反応を検討した. 1)Ni触媒によるシラジエンとアルデヒドとのヒドロシラン存在下のカップリング反応 Ni触媒を用い,ヒドロシラン存在下,1-dimethylphenylsilyl-1,3-butadieneと種々のアルデヒドとのカップリング反応において,配位子としてトリフェニルホスフィンを用いると,立体選択的にE-アリルシラン誘導体が生成するのに対し,含窒素ヘテロ環カルベンを配位子として用いると立体選択性が劇的に変化し,Z-アリルシランのみが生成することを見いだした.本反応では,配位子を換えるだけで同じ基質からE-,Z-アリルシランの作り分けが可能となり,アリルシラン誘導体の新しい立体選択的合成法となり得る. 2)Pd触媒を用いたエニンのシリルスタニル化を伴う環化反応 Pd触媒存在下,trimethylsilyltoributylstannane(以下シリルスタナンと略す)とエニンとの反応では,Pd触媒として不均一系触媒であるPd-CやPd(OH)_2を用いるとシリルスタニル化を伴う環化反応が進行するのに対し,均一系触媒にリン配位子を添加した触媒系ではアルキン部のシリルスタニル化のみが進行するため,これまで均一系触媒を用いることはできなかった.一方,含窒素ヘテロ環カルベンを配位子として用いると,均一系Pd触媒を用いてもシリルスタニル化を伴う環化反応が進行することを見いだした.
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