Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
桜島火山で発生する爆発的噴火の力学過程をより詳細に明らかにするために、爆発地震の初動に続く振幅の大きな引き波(D相)に着目し解析を行った。D相は見かけ伝播速度、振動軌跡の卓越方向からP波と考えられるが、詳細に見てみると単純なP波とは考えにくい特徴が見られた。D相のパルス幅は震央距離が長くなるにつれ伸び、振動軌跡はパルスのピーク以降直線性が悪くなり楕円振動を示す。波形解析から、D相はP波で始まり、ピーク以降Rayleigh波が卓越してくることが明らかになった。波形の特徴から、D相を励起する震源は1つの円筒収縮力源ではなく、深さ2kmからそれよりも浅い部分へ順次伝播するのではないかと考え、鉛直方向に配置した10個の多点震源による観測波形の再現を試みた。その際、各点震源の震源メカニズムは円筒収縮を仮定し、各地震モーメントおよび発震時はグリッドサーチにより観測波形と理論波形の残差が最小になるように求めた。その結果、浅部における円筒収縮によりRayleigh波が励起され、観測されている現象を説明できた。地震モーメントは深部では大きく、浅部になるほど小さくなり、特に深さ1km以浅では、地震モーメントは急激に小さくなる結果が得られた。また,伝播速度については、深さ1kmまでは円筒収縮の伝播速度は2.0km/sであったが、それより浅部に移動すると速度は遅くなり深さ0.2kmでは1.5km/sとなった。桜島火山における爆発的噴火の発生の際には火口直下数100mの位置にガス溜りが形成されており、火道の上部ではマグマ中に気泡が形成されていると考えられる。今回得られた結果の浅部における地震モーメント、伝播速度の減少から、マグマ中の気泡の量は浅部ほど多くなっていることが考えられる。