Research Abstract |
実際の下水処理施設から採取した活性汚泥を用いてMLVSS濃度と17β-エストラジオール(E_2)の初期濃度,並びに水温を変化させた条件下における生物分解実験を行い,E_2の残留濃度,分解速度,半減期から生物分解特性を検討した.また,高度浄水処理に用いられる生物活性炭によるE_2の分解特性を調査するため,実際稼動中の浄水場から採取した生物活性炭を用いて,MLVSS濃度とE_2の初期濃度,並びに水温を変化させた条件下における生物分解実験を行った. 活性汚泥としては,都市下水処理施設や浄化槽などの計8ヶ所の下水処理施設の曝気槽から採取した混合溶液を用い,希釈水には元の混合溶液を遠心分離した上澄み液を用いた.また,実際の上水処理場の活性炭吸着処理筒に付着する微生物として、採取した生物活性炭を超音波処理して剥離したもの(VSS)を用いた.実験は対象の環境ホルモン物質(E2)の濃度を10,30,50mg/lの3段階に,また水温を5,20,35℃の3段階に設定して振盪培養器にて行った. その結果,(1)E_2の残留濃度はその初期濃度が低い場合に比べて高い場合の方が高くなるが,分解速度の差はみられないこと;(2)MLVSS濃度(微生物群の量)的な影響を受けて分解速度が変化し,MLVSS濃度が低い方が分解が緩やかであること;(3)低水温の場合に比べると高水温の場合の方がMLVSS濃度の影響度合が小さく,E_2の残留濃度は低水温の方が高水温の場合より高く,20℃と35℃の両条件ではE_2の残留濃度に大差は認められないこと;(4)都市下水処理施設に比べて,一部の浄化槽の方ではMLVSSの濃度が高いにもかかわらずE2に対する分解性能が低く,操作運転条件を最適化する必要があること;(5)上水の高度処理を目的として,浄水場に導入した活性炭吸着処理施設の活性炭吸着材に付着している微生物はE2に対しても高い分解能力を有し,その分解性は水温の影響を大きく受けること;などの重要な知見が得られた. また,E2などの微量汚染物質の除去性能に影響を及ぼすと考えられる水系フミン質について,水質分析,吸着処理実験およびモデル解析を通して,解析方法を提案すると同時に,フミン質の組成と吸着容量特性を明らかにした.
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