Research Abstract |
本研究の目的は,理数教育の達成度の全国調査の全体像を明らかにするとともに,全国的な達成度の評価システムの開発の上での問題点等を比較的に検討を行うことである。そのために,研究協力者として,項目反応理論に精通している国立教育政策研究所の研究者1名が参加した。 本研究においては,諸外国の全国調査や国際調査で使われ始めている項目反応理論を中心に研究を進めた。第1に,達成度の全国調査として,アメリカの全米教育進歩評価(NAEP)やイギリスのナショナル・テストについてまとめた。アメリカにおいては教育政策としてNAEPが行われており,4学年と8学年を中心に,読み方,書き方,数学,理科,米国史,公民,地理,芸術などの多様な教科について,全国の傾向,州の傾向,長期的傾向などの多様な目的で,無作為標本抽出法による調査が行われている。そして,そこでは項目反応理論が大きな位置を占めている。イギリスにおいては,学校評価等の目的でナショナル・テストが行われており,理科と数学については7歳,11歳,14歳時に全数調査で行われる。数学の調査問題は,児童・生徒の分化に対応して分化しており,電卓許容,非許容の2種類のテストがある。アメリカやイギリスはテストのないが歴史があり,またテスト理論と結びついて学力観によって理論に裏打ちされた全国調査が可能になっているようである。第2に,3名の教育測定学の研究者へのインタビュー及び研究協力者の解説などをもとに,項目反応理論についてまとめた。そこでは,項目反応理論の可能性として,テストの等化だけではなく適応的学習が挙げられ,また,個別の具体的な方法論についてもまとめられている。第3に,項目反応理論による調査結果の比較を実証的に行うために,平成3年の基礎学力調査(算数)に対比して,平成16年3月に小学校40校において算数達成度比較調査を実施した。これらの算数達成度に関する項目反応理論を使った分析は今後の課題である。
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