Research Abstract |
湿潤地域の日本,台湾,フィリピンの扇状地では,勾配0.5〜1.5度は珍しくない。これに対し,アメリカ合衆国西部の乾燥地域をおもな調査地としたBlair and McPherson(1994)は,0.5〜1.5度の堆積勾配が自然界には存在しないこと,扇状地は1.5度以上であることを主張した。ほとんどの研究者がこの主張に同意していないものの,反証データがないために,1.5度以下の扇状地は扇状地と言いがたい状況になりつつあった。本研究では,スペインで開催された扇状地会議で,日本,台湾,フィリピンの690の扇状地を取り上げ,0.5〜1.5度の堆積勾配の存在を主張し,多くの研究者の同意を得た。さらに,湿潤地域での堆積勾配を確実にするために,犬山扇状地,安倍川扇状地,浅間山麓の扇状地で現地調査を実施した。また,湿潤地域のデータを増やすために,スイスとオーストリアの60扇状地のデータ収集を終え,韓国,ニュージーランドの扇状地を収集しているところである。一方,乾燥地域においては,合衆国西部のデスバレーの123扇状地の勾配を測定した。現地調査も行い,デスバレーでは,0.5〜1.5度の堆積勾配が欠けていることを明らかにした。これらのことから,扇状地を勾配1.5度以上に限ることができるのは少なくとも乾燥地域だけであり,湿潤地域にはあてはまらないことを確信した。現在,日本,台湾,フィリピンといった湿潤地域では,堆積勾配0.5〜1.5度の扇状地も存在することを論旨とした,論文を執筆中である。
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