Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
本年度は、最終年度として、基礎的資料を得るためにこれまで行ってきた研究で得られた資料の分析、まとめの作業を行った。その内容は3つに分けることができる。第1は、小学校国語科教科書に使用されている語いの分類、集計である。国語科教科書の語いは読み書きの基礎となる学習語いとして位置づけられると考え、一部の助詞を除き、教科書の中に使用されているほぼ全ての語いについて単元、単元外を問わず分類、集計した。対象は、平成15年度版教科書(6社)の1年上から3年下、および3社の4年上から6年下までで、市販のデータベースソフトを用い、のべ語い数で約33万8千語についての分類、集計作業を行った。その結果、例えば、平均総語い数は、1年から5年にかけて増加し、1年から3年までの語い数の増加量は1年で約4千語であることなどが明らかとなった。第2は、聾学校の国語科指導場面におけるやりとりに関する検討である。複数教師ののべ29時限の授業場面について書き起こし、そこに含まれる発問の内容と児童の応答との関係などについて検討した。その結果、教師の発問数の全発言数に占める割合や発問・応答の内容について明らかとなった。併せて、学習前の教科書使用語いに関する手だてが読解指導に必要な場合が多いことが示唆された。第3は、米国、スウェーデンの聾学校における読み書き指導の実際と評価方法に関する検討である。特に米国の訪問校では、読み書きに焦点を当てたプログラムが実践され、児童の読解力を測定する手段として、聴覚障害児用向けの検査を用いた数量的な評価方法と、ポートフォリオ形式で児童の作品や様子を記録保存したものに基づく質的な評価方法とが併行して用いられていた。