Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
1.セシウムを陽イオンとする、らせん状ポリマー構造を含む三種のペルオキソポリモリブデン酸塩の合成法の確立については、らせん状ポリマーのものが、水/有機混合溶媒で-10℃程度の低温において再現・収率とも良好に得られることがわかった。他の二種については、確実な合成法は確定できなかった。2.らせん状ポリマー構造を有するペルオキソポリモリブデン酸セシウム塩と網状ポリマー構造を有する同ルビジウム塩との熱分解挙動は、共に数段階を経てることから、ペルオキソ基が複数段階で分解すると考えられる。この分解挙動を赤外スペクトルで追跡した。いずれの塩でも、100℃あたりまでで結晶水・配位水とも脱離するが、全体の構造は保たれていた。しかし、170℃付近でペルオキソ基の分解が始まると、直ちにスペクトル全体に大きな変化が生じ、最初のペルオキソ基が分解した時点で全体構造に変化が生じることが明らかになった。ポリマー構造を保ちつつ酸化物材料に変換したいと考えていたが、それは困難であることが示された。3.ポリマー構造を有するペルオキソタングステン酸塩については、モリブデンと同様の二核ユニットが連結した一次元ポリマーをセシウム塩として単離した。これは、ペルオキソ基ではなく、オキソ基架橋構造をとるが、結晶状態が悪く、良好な構造データは今のところ得られていない。また、二リン酸を含むペルオキソタングステン酸塩で、陽イオンの種類と組合せにより、多彩な陽イオン架橋ポリマーが得られることがわかった。4.タングステンの三核ユニットは、このユニットを含むカルボン酸錯体・リン酸錯体の溶液内挙動を^1H、^<13>Cおよび^<31>P-NMRで追跡し、配位子があればこのユニットは溶液内でも安定に存在することが確認された。しかし、様々な条件での合成を試みたが、新たなビルディングユニットの発見には至らなかった。