Research Abstract |
これまでの研究成果から、マウス・ラット骨髄細胞中に存在する血液幹細胞から,DC前駆細胞が,Flt3/Flk2リガンドとIL-6の組み合わせにて、増殖しながら徐々に分化して行くことが明らかとなったので,本研究では,特にマウスあるいはヒトES細胞の維持・培養に使用されている,サイトカインLIF (leukemia inhibitory factor)が,血液幹細胞中のDC前駆細胞を,未分化の状態で維持する事が可能か否かを明らかにする目的で,Flt3/Flk2リガンドとIL-6に加え,更にLIFを用いて検討を行った結果,Flt3/Flk2リガンドとLIFの組み合わせに於いては,培養早期から,樹状細胞への分化が促進され,結果として,DC前駆細胞を維持出来ない事が観察された。これはLIF因子により,マウスES細胞を未分化状態で,維持するメカニズムが,細胞の分化段階によって異なる事を意味する。但し,マウスに於いて,ES細胞より,M-CSF欠損マウスから分離確立された,間葉系細胞株OP-9とGM-CSFを用いて,ES細胞から樹状細胞に分化誘導出来る事が,報告された(Blood 2003)ので,こうした培養方法を一般化する目的で,ラットES細胞或いはES細胞様細胞株の樹立を試みた。結果,マウスES細胞と同様の細胞株を得る事が出来たので,現在マウスで報告のあった様に,ラットES細胞様細胞株から樹状細胞への分化誘導可能か否かを検討中である。 また,樹状細胞への応用研究として,種々の遺伝子導入システムが開発されたが,本研究でも,樹状細胞への遺伝子導入システムも最適化を確立する目的で,アデノウィルスを発現ヴェクターとする、緑色蛍光蛋白発現系,HIVリボゾームEGFP,或いは不活型HIVウィルスを用いた遺伝子導入系,更にHIV改変型レンチウィルス遺伝子導入系により、樹状細胞、或いは樹状細胞前駆細胞への緑色蛍光蛋白の遺伝子発現効率の評価を、共焦点レーザー顕微鏡、FACS解析にて行なった所,これまでに報告のあった,アデノウィルスを発現ヴェクター,HIVリポゾームの遺伝子導入システムは,いずれも無効であることが明らかとなった。唯一,HIV改変型レンチウィルス遺伝子導入系により遺伝子導入が,培養2週〜3週後に,可能であることが示された。
|