Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究の目的は骨粗鬆症などに苦しむ方々が実社会で大いに活躍できるような高度医療・福祉を実現することである。骨の性質は性差や加齢に伴い変化するため、患者一人一人のニーズにあった材料「テーラードマテリアル」を創製するには互いに性質の異なるセラミックスとポリマーとのハイブリッド化が重要な要素技術となる。そこで、本研究では、生体内で力学的に調和しながら最終的に自家骨と置換される新規な無機/有機ハイブリッドを創出する。本研究は以下の3つのプロセス、1)生分解性リン酸三カルシウム(TCP)セラミックスの作製、2)生体骨と力学的に調和した生分解性TCP/ポリ乳酸(PLLA)ハイブリッドの創製、3)その生物学的評価に基づいて推進している。ハイブリッド化は開放気孔からなるTCP多孔体をマトリックスとして、その気孔内にPLLAを導入し、TCPとPLLAとが三次元的に相互連結した微細構造を構築する。もし、マトリックスであるTCP多孔体の気孔率を制御できれば最終的に得られるハイブリッドのヤング率を制御可能となる。上記の視点にたち、平成15年度はTCP多孔体の作製条件の検討を検討し、リン酸カルシウムファイバーから気孔率を40%から55%の範囲で任意に制御可能なTCP多孔体を作製した。ついで、平成16年度はこの多孔体の内部に酵素重合法によりPLLAを導入して緻密なTCP/PLLAハイブリッド材を創製した。このTCP/PLLAハイブリッドは相対密度が95%程度と緻密な構造をしており、その力学特性は既存のバイオマテリアルの中では生体骨のそれに近い。平成17年度は得られたハイブリッドの生体適合性の評価に注力した。すなわち、作製したハイブリッド材に骨芽細胞を播種し、その初期付着率・細胞増殖性・細胞形態・細胞分化・石灰化について調査した。その結果、ポジティブコントロールであるアパタイトセラミックスと比較して、本ハイブリッド材はアパタイトと遜色ない優れた生体適合性を有することが見出された。今後はin vivoでの動物実験による検証が必要である。
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