Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
短期の動作習得について検討するため、「後ろ立ち幅跳び」を被験者に実施させ、映像および床反力計を用いた動作分析法によりその習得パターンを定量化した。当初予定していた「その場跳躍1回捻り着地」については、やはり身体長軸回りの回転を繰り返すことによる三半規管由来の平衡感覚の低下や酩酊感が大きいため、動作取得パターン確認のための習得対象動作としては適さなかったことから実験対象から外した。動作分析のための身体モデルは、足、肩、大腿、胴体の4つのセグメントからなる2次元剛体リンクモデルとした。被験者には10回を限度として実験試技を行わせ、比較的大きなパワー発揮を伴う試技動作であることから3分以上の休息を試技間に挟みながら行った(動作に悩み始めた場合には、簡素なイミテーションドリル的動作練習は制限せず行っても良いこととした)。習得パターンを定性的に評価すると、回数を重ねる毎に後方へ跳ぶ際の腕振りの使い方が変容するかと予想していたが、外見的には顕著な変化は示さなかった。ただし、踏切動作中の腕振りは床反力を大きくするような力強い振り方に変化していたようで、測定した床反力の変化パターンについて、跳躍動作前半における腕振り中の床反力が試技を重ねる毎に徐々に大きくなる傾向を示した。関節トルクについてみると、跳躍前半の膝および股関節伸展トルクが試技毎に大きくなる傾向を示し、より後方へのキックを強調した動作へと変容していた。関節角度についても、膝および股関節の屈曲角度が大きくなり、より沈み込んだ跳躍準備姿勢をとるように変化し、動作中の伸展速度もやや大きくなっていた。これらのことから、複雑な動作の短期的習得においては、習得初期には動作前半の身体的負荷を低下させて身体のバランスを保つ方向に意識を振り向け、動作の習得が進むにつれて、動作全体にわたるパワー発揮を大きくするように変容するということが示唆された。