Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2005: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2004: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
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Research Abstract |
今年度は,課題研究の成果を,アンドレイ・ベールイの長編小説『モスクワ』論(東京大学大学院人文社会系研究科,博士論文)としてまとめた(論文構成:序論,第1部「『モスクワ』の世界--都市のイメージ」,第2部「『モスクワ』の人間--カロープキンの神秘劇」,結論)。第1部では,19世紀ロシア文学の伝統ならびに同時代のロシア文学との比較を行いつつ,『モスクワ』における世界,トポスの問題,都市のイメージ(滅び行く都市,監視都市,「仮面」都市)を考察した。『モスクワ』において,これらの都市のイメージの多くは,同時に登場人物達の特性でもあり,それは世界と人間のコレスポンダンスを重視するベールイの思想に基づいていることを論じた。また,この作品で描きだされるモスクワという場所は,革命前のロシアであると同時にソ連的な時空間の要素も持ち合わせるといった一種アナクロニズム的な特徴をもっており,モスクワの終末性,監視都市というイメージはベールイのソ連観を表したものでもあることを指摘した。第2部では,主人公の精神的変容と再生を,20世紀ロシア文学全般においても主要な主題である「見ること/見られること」という視点,聖書のコンテクスト,人智学との関連などから多面的に考察した。 研究の成果の一部を,単著論文「科学とオカルト,アンドレイ・ベールイ『モスクワ』の《世界を甦らせる目》」(ロシア語),単著論文「科学の視線/秘儀者の眼□□アンドレイ・ベールイ『モスクワ』」で発表したほか,2005年10月には,モスクワのプーシキン博物館で行われた国際アンドレイ・ベールイ学会で,口頭発表(「ベールイ『モスクワ』における眼」)を行い,討議に参加した。
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