Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究の目的はオルソンの特殊利益論を足がかりに、圧力団体の政治への働きかけを、特殊利益というグループ内で公共財として機能する資源を複数のグループが奪い合う状況として捉え、そこでの行動を分析することである。本年度は6月に1回、12月、2月に2回ずつ上記の状況を単純化したモデルでの経済学被験者実験を行った。6月、12月の実験では去年の実験のデータを補強する目的で追加実験を行い、特殊利益の額が低く非協力が支配戦略である場合でも、特殊利益の額が十分に高く協調が支配戦略となる場合と同程度のグループへの協調を引き出すという前年度の実験で示された傾向が統計的にも有意であることを確認した。また12月と2月の実験では特殊利益そのものの影響と他グループとの競争意識が与える影響を区別する試みを行い、他のグループのメンバーのグループに対する協調の程度が被験者に情報として与えられるだけでも自分が属するグループへ協調が強まること、但しその効果は特殊利益がある場合よりも弱く、また同じゲームを繰り返す場谷徐々に弱まることを確認した。圧力団体が特殊利益を求めて行動することが経済的な非効率の原因となることは指摘され続けているが、これらの結果から圧力団体同士が相互に競争をしているという構造を意識することがその傾向を強めることが明らかになった。またゲームの構造そのものからこの結果は社会厚生の改善となる公共財の自発的供給の増加にもこのようなグループ間の競争の導入が有効に機能しうることを示している。グループの規模の効果や参加者の初期条件の違いがある場合などより現実に近い状況での研究は課題として残されたが、公共財の自発的供給問題におけるグループ間競争の効果について、特に特殊利益の大きさとそれが個人の行動に与える影響との関係について詳細な知見を得ることができた。これらの成果は学会発表を終え専門誌に投稿中である。