Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
3年間の最終年である今年は、以下の点に沿って研究が進められた。(1)昨年度から引き続き、「逸脱の医療化論」の観点から「不登校」現象を分析すること。(2)不登校者・不登校者の親双方にとってのスティグマ観が、いかなる相互行為場面で発露するかの仮説構築。(3)(1)と(2)の交差する領域としての「親の会」「児童相談所」などへのフィールドワークの実施と、今後ための予備調査。(1)については、彼らが「医療」というものを、専門知とは異なる側面で分断し、「不登校を否定しない」というテーゼに合うものを自らのうちに引き寄せ、逆に、そうでないものを遠ざけようとする実践がされていることをフィールドデータを使用しながら確認し、論文として成果をまとめた(現在印刷中)。(2)については、別の科研との併行課題という事になったが、本課題の中心である「親規範」との関わりで言うと、「不登校」にまつわる不登校者のスティグマが、こと親に対しては圧倒的にパッシング不能な状況におかれている事、それゆえ、不登校の親の会のひとびとにとって、自らが子どもの「スティグマ」を増さないためにそれを「受け入れる」という実践が何よりも重視される可能性が高くなる事を確認した。(3)については、(1)(2)の考察の元になるデータ収集と、今後、(1)(2)を交差させていく際の重要な問である「医療とつながりを持つ当事者や親の持っている『規範意識』がいかなるものであるか」を調査していくための予備調査を実施した。次年度以降に役立てていきたいと考えている。