Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
1920-1950年代、アメリカの音楽教育において、子どもの創造性開発を目指す様々な理論や実践が展開された。本研究では、この期の音楽教育に関する文献を発掘するとともに、その中から、創造性開発を原理とした理論や実践を確定し、検討・分析することを目的としている。今年度は、創造性開発を目的とする音楽科教育論を検討し、それに基づいて行われた教育実践の分析を行った。L.B.ピッツ(Lilla Belle Pitts)やS.N.コールマン(Satis N.Coleman)の史料を、さらに充実させるとともに、他の史料の発掘・収集を行った。新たに収集した資料の検討によって、以下のことが明らかになった。・ピッツは、主著『移りゆく世界における音楽カリキュラム(The Music Curriculum in a Changing World)』や『中等学校における音楽的統合(Music Integration in the Junior High School)』において、子どもの創造性開発を目指す音楽教育論を構築し、それに基づいて、教科書『私たちの歌の世界(Our Singing World)』を編纂した。同書は、幼児期、初等・中等段階の音楽学習指導を構想した体系的な音楽教科書であった。「読譜」「歌唱表現」「リズム表現」「創造的表現」「音楽の聴取」からなる学習領域のもとで、詳細な学習指導が展開されていた。・コールマンも、子どもの創造性開発を目指して教育実践を行ったが、その中で、特に注目されるのは、器楽指導である。実際に楽器を制作・演奏させる指導を展開していた。・これらの他に収集した理論書や教科書、実践報告書などを、子どもの創造性開発の視点から整理した。