フラストレート系遷移金属酸化物における重い電子系的挙動と量子スピン液体状態の探索
Project/Area Number |
15740215
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Condensed matter physics II
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
三好 清貴 島根大学, 総合理工学部, 助教授 (10294365)
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Project Period (FY) |
2003 – 2004
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2004)
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Budget Amount *help |
¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2004: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 重い電子系 / フェルミ液体 / フラストレーション / コバルト酸化物 / 層状構造 / 巨大熱電能 / 電子相関効果 |
Research Abstract |
本研究では、Na_xCo_2O_4系に着目し、研究を行ってきた。この系は層状構造を持つ金属伝導体であり、大きな熱起電力を示すことから元々は熱電変換材料として注目されている物質である。本研究では、この系の良質試料をフローティングゾーン法で作製し、低温物性を精密に調べた。特に近年注目されてきたスピネル酸化物LiV_2O_4(γ=420mJ/molK^2)と詳細に比較・検討し、重い電子系的な挙動の有無を検証した。まず、帯磁率では15K付近に幅広なピークが見られ、ピーク付近の磁場依存性(H≦7 T)も含めて、LiV_2O_4の帯磁率の振舞と非常に類似していることがわかった。また電気抵抗は金属的で、低温ではρ=ρ_0+AT^2の式に従い、他の重い電子系と同様にフェルミ液体の挙動を示すことがわかったた。さらに比熱測定ではC/Tの値がT=2Kで約60mJ/molK^2であることがわかった。ウィルソン比はRw=2.7(強相関系では通常Rw=2前後)、またA/γ^2〜10^<-4>[μΩcm/K^2/(mJ/molK^<-2>)^2]であり、門脇-Woodsの関係よりも一桁大きくなった。A/γ^2については単結晶試料を使えばもう少し下がるのではと考えている。また、このような特性を示す試料のNa濃度はx〜1.5であることをプラズマ発光分析により明らかにした。以上のようにNa_<1.5>Co_2O_4では、LiV_2O_4と同様に、帯磁率の幅広のピークを伴いながら有効質量の増大したフェルミ液体の形成が起こることがわかった。Na_xCo_2O_4系ではCoサイトが三角格子を形成しており、有効質量の増大にはフラストレーションの関与が期待される。現在、類似系であるLi_xCo_2O_4系について、Li濃度xを1≦x≦2まで系統的に変化させた試料の合成に成功し、様々な測定を通して重い電子系的挙動の有無の検証に取り組んでいる。今後、他のフラストレート系遷移金属酸化物についても物性探索を行い、d電子系における重い電子系的挙動の起源の解明を目指す。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)