高スピン縮合多環炭化水素の合成と磁気的相互作用に関する研究
Project/Area Number |
15750034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Organic chemistry
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
久保 孝史 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60324745)
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Project Period (FY) |
2003 – 2004
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2004)
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Budget Amount *help |
¥3,500,000 (Direct Cost: ¥3,500,000)
Fiscal Year 2004: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2003: ¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
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Keywords | トライアングレン / 基底三重項 / 合成 / 多段階両性レドックス / ESR / NMR / 非局在型一重項ビラジカル / フェナレニル |
Research Abstract |
基底三重項状態であるトライアングレンに、嵩高い置換基を導入したヘキサ-t-ブチルトライアングレン1の単離を目的として、研究を行っている。現在、1の前駆体となるジヒドロ体2の合成単離に成功している。2を各種脱水素剤と反応させてビラジカルの発生を試みたが、水素原子が一つ抜けたモノヒドロモノラジカル体と思われるシグナルは確認できるものの、ビラジカル由来のシグナルは観測できなかった。また、光照射によるビラジカル発生を試みたが、モノヒドロモノラジカル体のみを与えた。一方、中性ビラジカルの酸化還元状態であるモノラジカルカチオン、モノラジカルアニオン、ジアニオンの4つの化学種の発生に成功した。NMRを用いた電荷密度分布解析やESRを用いたスピン密度分布解析から、電荷やスピンは分子軌道計算で予想されるように、非結合性を反映する分布様式を示した。 また、ビラジカロイドと呼ばれる非局在型一重項ビラジカル化合物の合成単離も行なった。ビラジカルの構造寄与のため通常は不安定で単離が不可能なビラジカロイド化合物に、不対電子の非局在化ユニットであるフェナレニル骨格を組み込むことにより、空気中で安定に単離できるビラジカロイド化合物の単離に成功した。ビラジカロイドは分子内の二つの不対電子間の相互作用が弱まっているため、分子間の相互作用が生じるようになると期待される。実際に単離に成功したビラジカロイド化合物の分子間距離は、van der Waals半径の和を大きく下回るものであり、その結合性相互作用は不対電子間の相互作用によることが分子軌道法を用いた解析により明らかとなった。この様に、非局在型一重項ビラジカル化合物は分子間相互作用に特徴的な性質を与えることが明らかとなった。この結果は、非局在型一重項ビラジカル化合物の固体物性(電気伝導性、磁性等)への展開を計る上で、重要な知見となると考えられる。
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Report
(2 results)
Research Products
(6 results)