Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
今年度の主な研究対象は、アジアの街路型職住複合建築(1)旧東京市営店舗向け住宅(東京都江東区)、(2)ショップハウス(マレーシア)である。(1)東京都江東区に、関東大震災の復興事業として旧東京市が建設したRC造2階建の街路型職住複合建築があり、竣工77年後の現在にも43戸が軒を連ねて使い続けられている。間口約4.5m、4戸〜8戸がひとつのブロックになり、タウンハウスと同様に共通壁を有する。奥行が6畳2間続きあったものが、清澄庭園の境界ぎりぎりまで後部増築の事例が多い。頑丈なRC造、2.6mの天井の高さ、職住一体が可能な内部空間が、より自在な空間転用を可能にしている。共有部分が少ないため、比較的に維持管理しやすい。奥行方向の増築の他、陸屋根の上にも増築が見られる。増築やファサードの変更により、景観の統一感はやや損なわれているが、外壁のレリーフ装飾など、昔ながらの面影が残っている。老舗の他に、新規参入事業も見られる。代々住み続けている世帯の他、商売内容の変更、居住専用に転用、賃貸化などの事例がある。独立した建築の連続性で構成された統一感がある街区、建物の柔軟な管理形態がその持続的な利用を可能にしていると考えられる。(2)ショップハウスに関する統計資料集めと市街地の利用実態調査を行った。新旧に係わらず、ショップハウスは不動産の主な売買、投資対象であり、その空間構成は継承され、現在にも多く建設されている。職住一体/業務専用/居住専用など利用形態の変化が見られる。既存ショップハウスの物理的な空間構成は、立地場所の性格の変化に応じてリノベーションなど変更される場合があれば、ほとんど変更せずに対応している場合も多い。ショップハウスはまちなかの性格を大きく依存せずに使い続けられる建築類型であるが、空間変更の度合いにより、持続的な利用を可能にする本質が失われ、転用の融通性が失われる場合がある。