Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2005: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2004: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
中国雲南省石漠化地域において,植生回復の潜在的な能力を検討するために,土壌堆積状況に応じた木本の定着状況とその定着による植生回復促進作用について調査を行った。調査は,石漠化が進行する地域を,岩レキの露出が顕著な岩礫地と岩レキの崩落等によって生じた土壌堆積地に区分し行った。両区分は昨年度までの調査で,分布する植生の種組成・相観が異なること,後者は20年以上にも渡って同様な景観のままであることがわかっている。両立地に出現した木本個体は,単位面積当たりの個体数,種数ともに土壌堆積草地で多かった。一方,シダ,ツル等を含む草本種は種数,多様性において岩レキ草地で高かった。既に定着した木本個体が植生回復に与える効果を定量化するために,その林冠下で生育する植物の種組成,被度,高さなどを,同様な環境で,その比較する林冠と同じ面積のオープンサイトに生育する植物の種組成,被度,高さなどと比較した。その結果,土壌堆積地では定着した木本種の林冠下では,周辺のオープンサイトに比べ,被度が有意に低下したのに対して,岩礫地では林冠下とオープンサイトで有意な差は認められなかった。これは,土壌が少なく乾燥に頻繁に曝される岩礫地に生育する木本種は,土壌が多く湿潤な土壌堆積地に生育する木本種に比べて,光,水,栄養などを巡る競合で,他個体に与える影響が弱いためと考えられ,強いストレス条件下では種内・種間競合が弱いという定説を支持する結果といえる。以上より,土壌堆積地では,遷移過程で競合排除によって種の入れ替わりが速やかに進行し,攪乱後の植生回復が早いのに対して,岩礫地では競合が強く働かないために,個体,種の入れ替わりが遅く遷移が停滞する傾向にあることが示唆された。また,土壌堆積地では,潜在的に遷移進行は可能であるにも関わらず,20年以上も停滞する原因としては,地域住民による木本稚樹の伐採が考えられた。
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