Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
イガイ類の付着は足から分泌されるタンパク質が硬化して形成される足糸によって行われる。この足糸タンパク質は、生合成から分泌に至るまでの間に細胞内で様々な翻訳後修飾を受けることが知られている。本研究では、翻訳後修飾に関わる酵素や分泌に関与するタンパク質を明らかにするため、足糸タンパク質と相互作用するタンパク質を、酵母Two-Hybrid systemを用いてスクリーニングすることにした。函館湾においてイガイ類を採取し、まず、既報のPCR法によって種の同定を行った。その結果、採取した10個体はいずれもムラサキイガイであることを確認した。次に、そのうち1個体の足よりmRNAを分離してcDNAの合成を行った後、PCRによって2種類の足糸タンパク質(MGFP1およびMGFP2)をコードするcDNAの増幅を行った。MGFP1-cDNAの増幅産物については、様々なサイズを示したが、5'端側から分析した部分塩基配列はいずれも相同で、既報の配列にほぼ一致した。一方、MGFP2-cDNAの増幅産物についても、様々なサイズのものが得られ、同様に5'端側の相同性は高かったが、3'端側の繰り返し領域は、繰り返し単位の欠損や重複により、少なくとも3つの配列パターンに分類されることがわかった。さらに、これらのアイソフォームは異なる複数の遺伝子にコードされていることが示唆された。これらの結果は、MGFP2の基本構造が種を超えて保存されているとする既報の知見とは異なっていた。また、配列も既報のものとはアミノ酸配列レベルで約85%の相同性を示すに留まり、異なっていることがわかった。さらに、MGFP1およびMGFP2をコードするこれらのcDNAをBaitベクターにサブクローニングする一方、cDNAライブラリーをPreyベクターに構築して酵母Two-Hybrid systemによるスクリーニングの準備をした。