Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
食物として摂取されたタンパク質の一部は、抗原として認識される大きさのまま腸管から吸収され、食物アレルギー症状を誘発することが知られている。本研究は、食品成分の一つとして広範囲にかつ多量に存在するポリアミンの腸管での消化・吸収への関与について検討しており、すでにラットを用いたex vivoの腸管吸収実験において、モデル水溶性高分子である蛍光標識デキストラン(4.4kDa)の腸管吸収が、スペルミン(Spm)の共存により促進されることを明らかにしている。今年度、ポリアミンの食物アレルギーへの関与を探る研究の一環として、代表的なアレルゲンタンパク質であるオボアルブミン(OVA)とリゾチームのSpm共存下での腸管吸収を検討した。腸管吸収実験は、SD系雄性ラットを用いてin situ closed loop法により評価した。ウレタン麻酔下ラットの空腸部分に約10cmのループを作成した。このループ内に10mMスペルミンの共存下、fluorescein isothiocyanate-labeled lysozyme (FITC-lysozyme)あるいはFITC-OVA溶液を投与した。経時的に頚静脈より採血し、蛍光分光光度計を用いて蛍光標識タンパク質の血液濃度を定量した。また、同様な腸管吸収実験を未標識OVAについても検討した。OVAの血中濃度はサンドイッチELISA法により定量した。その結果、FITC-lysozymeおよびFITC-OVAを用いた腸管吸収実験において、Spmの共存により両者とも吸収の増加がみられた。Spmの吸収促進作用は、蛍光標識デキストランの腸管吸収実験の結果と同様、投与約1時間後から顕著に観察された。また未標識OVAにおいてもSpmの共存下で吸収の増加が認められた。本結果より、食事由来のSpmによって、アレルゲンタンパク質の腸管からの吸収が増大することが示唆された。