Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
前年度までの研究によりフローサイトメトリーを用いて、腫瘍表面抗原とテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)蛋白の発現を抗hTERT抗体によって、同時に測定する方法を確立したので、本年度の研究として造血器腫瘍特に骨髄異形成症候群(MDS)急性白血病、より得られた骨髄細胞におけるhTERT発現の検討を行った。本年度は前年度の研究をもとに、NovoCastra社のmouse monoclonal抗体を使用した。Informed Consentを得たLow risk MDS(RA)患者19人、High risk MDS(RAEB and RAEB-t)患者11人、急性白血病患者8人から採取された骨髄検体におけるhTERT発現を、3カラーフローサイトメトリーを用い細胞表面抗原CD45 CD34にてblastとstem cell分画をわけて解析した。またこの方法によるhTERT発現とTRAP法により検出されたテロメラーゼ活性を比較検討した。Flow cytometryによる解析ではCD34陽性細胞のhTERT発現はLow risk群に比較してHigh risk群で有意に高くなっていた(p=0.0054)。個々の細胞における発現量に相関する蛍光強度もHigh risk群で高値であった(p=0.0084)。TRAP法により測定されたMDS患者骨髄細胞のテロメラーゼ活性はHigh risk群でLow risk群より高値であったが、その活性は骨髄全細胞中のCD34陽性細胞比率と相関していた。(r=0.71,p<0.001)よってこのテロメラーゼ活性はCD34陽性未熟細胞の増加を反映していると考えられた。Low risk群の一部の患者では、CD34陽性細胞のhTERT発現量は平均値より高くなっており、そのうち経過を追跡できた一例ではRAの状態からRAEB、RAEB-t、Leukemiaと進行していることからこれらの患者のCD34陽性細胞は他の患者とは異なり進行しやすい性質をもっている可能性があり、Low riskの段階で進行する症例をピックアップするためのマーカーになる可能性がある。Flow cytometryによるhTERT発現解析は従来のTRAP法やhTERTmRNA発現定量に比較し簡便でかつ、細胞表面抗原に対する抗体を適切に選択すれば様々な細胞のテロメラーゼ活性を知ることが可能な方法である。LeukemiaにおけるhTERT発現はM3で陰性であり、未熟なleukemic cellで高い傾向が認められるが、症例数が少ないため、今後検討していく必要がある。