Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究は幹細胞のマーカーとして新たに着目されたMsi-1の肝再生に関わる機能および個々の因子への作用を明らかにすることを目的とする。平成16年度報告書に記載した、再度行われたHepG2細胞へのMsi-1実験は今年度に引継ぎ行われ多数のクローンが作成された。以上より前年度までの研究と合わせ、結果として2種類のプロモーター(サイトメガロウイルスプロモーターおよびserumamyloid P componentプロモーター)をそれぞれ持つ2種類のMsi-1遺伝子は、それぞれラット初代培養肝細胞とHepG2細胞に導入された。1.ラット初代培養肝細胞に対するMsi-1過剰発現。2種類のプロモーターをそれぞれ持つコンストラクトのいずれを導入した場合においても、導入肝細胞は、コントロールに比べ増殖率、経時的減少細胞数に有意な差が認められなかった。また形態的に変化を認めなかった。2.HepG2細胞に対するMsi-1遺伝子の一過性発現導入。ヒト肝癌細胞株であるHepG2細胞では、Msi-1の一過性発現によって明らかな形態的変化を認めなかった。HepG2細胞の増殖率はもともと非常に高く、Msi-1の一過性発現による増殖率変化の検討は困難であった。3.安定細胞株の解析。ベクター内在の薬剤耐性遺伝子を利用したG418による選択的な培養で得られた細胞は、継代されたが、形態的変化を認めず、またウエスタンブロット法で継代された導入HepG2細胞ではMSI蛋白の発現が非常に弱いことが確認された。以上の結果より、HBXプロモーターなどの強力なプロモーターを用いて過剰発現をされることや、またより効率のよいアデノウイルス等を用いた持続感染による過剰発現の手法を用いてMsi-1を十分に発現させる必要性が示唆された。コンストラクト作成時に明らかになったalternate exonについては、欠失部位の補正を行いその存在意義について解析する予定である。