Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
平成15年度は、心血管系の動脈硬化性疾患と関連が深いと考えられるエストロゲンα受容体(イントロン1)の遺伝的多型性を検討した。白血球からDNAを抽出後、それぞれを認識する制限酵素で処理し、PCRによって増幅し、TC多型、AG多型を検出した。また、非侵襲的に冠動脈の動脈硬化を確認するために各附属病院で行う予定のマルチスライスCTの検査について、附属病院にある16列のCTと、附属第三病院にある4列のCTでの冠動脈石灰化指数(CAC)との整合性を確認し、共通の検査が可能であるかを検討した。平成16年度は、さらに症例のリクルートを継続し、計63例の症例を対象に解析を行った。CACと、測定した採血項目(HbAlc、IL-6、高感度CRP、アディポネクチン値)、対象者の高脂血症、高血圧、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害合併の有無、喫煙の有無、年齢、閉経年齢、罹病期間、対象者家族の糖尿病、高脂血症、高血圧、心血管疾患、脳血管障害の既往との相関を解析した。このうちCACと罹病期間は、単変量解析にて相関係数0.26(p=0.046)にて有意に相関を認めた。また、CACと年齢については単変量解析で相関係数0.39(p=0.00)で有意に相関を認めた。さらに冠動脈カルシウムスコアについて、他の全ての変数に関してステップワイズ法を用いた重回帰分析を行ったところ、罹病期間(p=0.01)と年齢(p=0.02)について有意な相関を認めた。以上から、年齢、罹病期間はそれぞれ独立して冠動脈病変に影響を及ぼすものと結論づけられた。また、エストロゲンα受容体遺伝子多型と冠動脈硬化との関係を明らかにするために、イントロン1のTC多型、AG多型との関連を検討したが、CACに関して、現在までの解析ではいずれの多型とも有意な連関は認められていない。