Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
目的:adenosineの虚血耐性獲得にadenosine代謝産物がどのように関っているのか、電気生理学的に検索した。方法:Wister rat海馬急性期切片を用いて、歯状回にてfield Population Spike (fPS)を記録した。adenosine代謝産物であるinosine、hypoxanthineを環流しシナプス伝達におよぼす作用を見るとともに、adenosine受容体(A1、A2a、A3)拮抗薬、adenosine deaminase(ADA)阻害剤(EHNA)、adenosine kinase(AK)阻害剤(ITU)などを投与して、OGD後のシナプス電位回復に及ぼす影響を観察し、虚血時のadenosine受容体を介する反応と、inosine等のadenosine代謝産物との相互作用について検討した。結果:海馬歯状回におけるfield PSはinosine (1mM〜10μM)の投与により濃度依存性の抑制効果を示した。hypoxanthineの投与にてはfield PSに変化は認められなかった。20分間のOGD負荷後のシナプス電位の回復を、コントロール群、adenosine受容体拮抗薬投与群、ADA阻害剤(EHNA)投与群で比較すると、コントロール群と受容体拮抗薬投与群では差を認めなかったが、EHNA投与群では回復が他の2群より悪かった。考察:虚血時のadenosine濃度上昇に伴う受容体の活性化と、adenosine代謝産物との何らかのinteractionによって虚血に対する耐性がもたらされている可能性が示唆され、inosineによるシナプス伝達抑制がその相互効果に関与していると考察される。