Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
未熟児の脳室内出血後の病態に近似したモデルとしてHeat shock transcription factorのknockout mouseの神経症状を観察した。このマウスは陸上での四肢の動きは正常マウスと差がなく、一見は健康に見える。ところが水槽に入れると泳ぎ方がぎこちなく、Morris water mazeではplat formに到達するまでの時間は有意に長かった。また同じ条件で繰り返し泳がせると学習速度は遅かったが、最終的な学習到達度は正常マウスと同じだった。次にこのマウスの脳室から髄液を排除して実験を行った。術後にはplat formに到達するまでの時間が短縮したが、正常マウスでも同様の変化が観察され、その改善度には差がなかったことから、水頭症の治療効果は無いと思われた。前年度の実験で髄液の停滞による一種の特発性正常圧水頭症モデルの可能性があることが示唆されたが、その治療効果は少なくとも短期的には現れないと思われた。この結果もまた、未熟児の脳室内出血後にみられる変化とよく似ている。軽症脳損傷後の病態を解明するため、出血周囲脳の浮腫・炎症・グリア反応を確認した。ラットの右caudoputamenに血腫を作成した。摘出した脳には脳浮腫が広がり、多核白血球、macrophage、astrocyteが浸潤していた。これらの変化は血腫の周辺だけではなく、そこから離れた脳室周囲にも観察された。脳出血において、thrombinが二次的悪影響を及ぼすことが示されており、血腫周囲の脳浮腫と炎症はthrombinの影響である。本実験では脳室周囲にもこれらの二次的変化が観察されたことから周生期脳損傷後の脳室拡大と発達障害は、急性期のthrombinによる組織障害がその後の脳形成を障害する可能性が示唆された。
All 2005
All Journal Article (3 results) Book (1 results)
脳神経外科速報 15・1
Pages: 65-70
機能的脳神経外科 44・2
Pages: 105-109
10029744216
Cerebrovascular Disease 48
Pages: 91-96