Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
前立腺癌診断におけるPSAの有用性は高いが、疑陽性例が存在することが問題である。PSAが軽度高値の症例においてPSAとは全く別機序で発現する腫瘍マーカーを組み合わせることができるならば、不要な前立腺針生検を減らすことができる。そこで今回、PSAが軽度高値の症例における、血清抗p53抗体値測定の意義について検討を行った。対象は群馬大学附属病院泌尿器科にてPSA・直腸診・経直腸的前立腺エコーのいずれかにて癌を疑い、前立腺多数カ所生検を施行したPSA20ng/ml以下の症例92例。生検施行前に血清を採取し、MBL社のELISAキットを用いて抗p53抗体値測定を行った。92例中、37例(40.2%)で前立腺癌が発見された。癌症例および非癌症例における各パラメーターを比較したところ、PSA、遊離型PSA/総PSA比、PSA densityは有意差が認められたが、抗p53抗体値では有意差を認めなかった。また、ROC curveを作成し、抗p53抗体値、遊離型PSA/総PSA比、PSA density等のPSA関連マーカーとの癌診断効率を検討したところ、抗p53抗体値が最もROC曲線の面積が狭くなり、診断効率が悪いことが分かった。病理学的所見別の抗p53抗体値は、高分化>低分化>中分化となり、primary Gleason gradeでは3>4>5、Gleason sumでは6>7>9>8となり、各群において有意差は認められなかったが、抗p53抗体値は癌の組織学的悪性度が低いほど高い傾向にあった。TNM分類別では、37例すべてが非転移癌症例であり、抗p53抗体値はT1cN0M0>T3N0M0>T2N0M0の順となり、臨床病期との間に関連性を認めなかった。今回の検討では、PSA20ng/ml以下の症例においては前立腺癌診断における抗p53抗体値測定の意義は低いと考えられた。