Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
頭頚部領域における悪性腫瘍に対する治療において放射線照射後で手術が必要となる場合、放射線による組織変化により術後の創傷治癒不全が問題となってくる。皮膚潰瘍動物モデルを用いた実験において、各種成長因子が皮膚粘膜創傷治癒を効率良く促進し、瘢痕形成を軽減することが知られている。そこで本研究は、遺伝子導入の手法(遺伝子治療)を用いて、放射線治療後の頭頚部手術における創傷治癒不全に対する検討を行うことを目的とした。現在までに注入および塗布による頚部創部へのreporter遺伝子導入の検討を行った。日本シロウサギを用いた喉頭創部損傷モデルにreporter遺伝子(LacZ遺伝子)を含む非増殖型アデノウイルスベクター(AxCAhLacZ)を頚部創部に直接注入または塗布にて導入した。導入後1、2、4週後に頚部皮膚、および胸鎖乳突筋の凍結組織切片を作製した。各組織切片をX-gal染色および抗β-galactosidase抗体を用いて免疫染色を施行し、各々での遺伝子発現強度や発現持続期間などを観察した。注入、塗布いずれにおいても、結果は1週後においてX-gal酵素組織染色でLacZ遺伝子の強い発現を認め、2週後で発現の減弱を認め、4週後ではほとんど発現を認めなかった。注入法では注入した部位に強い発現を認めた。塗布した場合は付近の粘膜およびその周囲に発現を認め、塗布のみでも遺伝子導入が可能であることが証明された。また放射線照射モデルラットの作成について検討した。