Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
眼脈絡膜悪性黒色腫はきわめて難治性な眼腫瘍であり、予後不良例も多くみられ治療法を確立することはいまだに大変難しい課題として残されている。現在治療法のひとつとして重粒子線(荷電粒子線)が使われているが通常の放射線治療に使われているX線と異なり、体内の一定の場所に高線量を集中させることができるという特徴を持つ。また、重粒子線のひとつである炭素イオン線は高LET(linear energy transfer)放射線であり、X線に比べて病巣に高い生物効果を示すため優れた治療効果が期待されている。実際の治療においては腫瘍の重粒子線感受性により治療効果が異なることがある。そこで我々は重粒子線治療の基礎的な裏付けを得るために、それぞれ重粒子線に対する感受性の異なる3種類のヒト由来眼脈絡膜悪性黒色腫培養細胞(92-1、OCM-1、OMM-1)を用いてin vitroにおける重粒子線感受性の違いがそれぞれの細胞の遺伝子発現プロファイルにどのように反映されているかを分子生物学的アプローチを用いて検討したいと考えている。具体的にはマイクロアレイを用いて、感受性に関与する可能性のある遺伝子の包括的スクリーニングを行い、その後より重要性の高い遺伝子にターゲットを絞り込んでの遺伝子の機能解析を行う。当該研究は感受性に関与する遺伝子を選び出しその機能を解明することにより、将来的に眼脈絡膜悪性黒色腫の重粒子線感受性の予測あるいは治癒効果の増大に役立てると考えている。今までのデータでは、重粒子線未照射時、2G照射後1h・4hに選別された遺伝子の中に感受性を規定するものははっきりしなかった。重粒子線2G照射後1h・4hでは線量が低く照射後の時間が短時間なため、発現の増減を示す遺伝子が少ないと考えられた。今後は線量を増加させ、照射後の時間を延長させて検討したいと考えている。