Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
現在、急激な高齢者の増加により全身疾患を有する要介護者数が増えている。それに伴い、高齢者の直接死亡原因として感染症が増加しており、感染源として口腔常在菌由来の歯性病巣感染の関与が指摘されている。そこで本研究は、肺炎や心内膜炎など、他臓器疾患に対する口腔由来細菌の関与を明らかにする目的として他臓器疾患感染病巣から採取された資料と口腔内細菌の16S ribosomal RNA gene (16S rDNA)について、分子遺伝学的手法を用いてシークエンス解析を中心とした遺伝学的類縁性の解析を行った。また、それら同定された細菌の分離部位や分離頻度等を比較することによりその細菌の病巣に対する特異性についても検討を行った。凍結保存され、既に連結不可能匿名化されている既存資料を用いた。心臓、肺からと、歯周ポケット、歯垢等の口腔内各部位から採取された資料から細菌の16S rDNAを抽出した。PCR(Polymerase Chain Reaction)法にてDNAの増幅を行い、細菌の存在、検出を行った。その結果、資料から口腔内細菌の16S rDNAが検出され、口腔内細菌の存在が確認された。また、シークエンス解析においても口腔内細菌の存在がみられ、口腔内細菌が全身疾患に影響を与えている事について検討を行った。また、資料から同定された口腔内細菌の中でも特定の細菌が、罹患疾患部位から高頻度に分離された事が確認できた為、口腔内細菌が全身疾患に対し病原性因子としての関与について検討を行った。今後は、本研究成果を踏まえ、更なる全身疾患における歯性病巣感染の解析や検討を行うことにより、口腔衛生の意義向上につながるものと考えられる。