Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
細胞接着は、細胞の形態形成・極性・増殖・運動等において様々な重要な役割を果たしている。本研究では、歯周炎において細菌の刺激を受けた歯肉上皮細胞の動態について、細胞間接着装置に着目して解析を行った。歯周治療時に炎症歯肉を採取し、4%パラホルムアルデヒドにて固定後、通法に従ってパラフィンに包埋した。試料は薄切してシランコートスライドガラスに貼付し、細胞接着装置の1種であるアドヘレンスジャンクションの構成分子、E-カドヘリンとβ-カテニンについて、mRNAの発現をin situハイブリダイゼーション法を用いて検索した。プローブはFITCで標識し、発色基質にはアルカリホスファターゼを用いた。検索の結果、E-カドヘリン、β-カテニンともに炎症部と非炎症部においてその発現に差は認められなかった。先に行った免疫組織化学染色において、タイトジャンクションの構成分子であるオクルディンの発現が弱かったことから、歯周炎における上皮細胞の反応には、アドヘレンスジャンクション以外の細胞接着装置がより関与している可能性も考えられる。今回は歯周治療時に得た歯肉を試料とし、同一切片上で炎症性細胞の浸潤の程度を目安としてmRNAやタンパクの発現の比較を行った。炎症歯肉という試料の性質上、炎症性細胞がほとんど見られない部位であっても、すでに上皮細胞が細菌に感作されている可能性も十分考えられ、炎症部と非炎症部においてその発現に差は認められなかった今回の結果につながったことも考えられる。