Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
心疾患をもつ高齢者においては、運動耐容能の低下、下肢筋力低下に伴う起居動作および歩行の障害が主要な日常生活動作(ADL)制限因子であるとされている。退院時の仮介護状態を減少させるためには、急性期こそ集中的・重点的なリハビリテーションが必要であるが、看護師でも計測できる下肢筋力計測器、対象に合わせて安全な運動強度を調節できる機器がない。そこで、科学研究費交付1年目は、下肢筋力計測器付き床上レッグプレス運動器を試作した。科学研究費交付2年目は、運動器の臨床応用前段階として、健常成人を対象に下肢筋力計測値の再現性の検証、表面筋電図を用いた主動筋群の同定を行った。研究成果は、2本の論文にまとめ、現在投稿中である。科学研究費交付3年目は、床上レッグプレス運動の安全性を検証するため、健常成人12名を対象として以下の運動負荷テストを行った。(1)エルゴメータによる漸増(ramp)負荷(2)中強度(最大随意筋力の40%以下)の等張性レッグプレス運動それぞれ運動中の呼気ガス、血圧・心拍数変動、主観的疲労度の変化を分析した結果、レッグプレス運動中の酸素摂取量(VO_2)は最大酸素摂取量のおよそ50%以下、心拍数は最大心拍数のおよそ40-50%程度であった。これらの数値は、米国心臓病協会が推奨している心機能低下患者における運動耐容能改善のための安全な運動強度と一致する。したがって、床上でのレッグプレス運動は、高齢者および心機能が低下した患者への適用も可能であることが示唆された。今回の研究期間では、機器の試作および健常成人を対象とした機器の運動効果・安全性を検証することができた。今後は、高齢者および運動耐容能の低下した心疾患患者を対象として、運動効果と下肢筋力およびADLとの関連について研究を継続する予定である。