思想教育の芸術鑑賞に及ぼす影響について-戦前の女学校向け人形浄瑠璃公演を中心に-
Project/Area Number |
15H00003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
哲学・芸術学
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Research Institution | 京都府立嵯峨野高等学校 |
Principal Investigator |
多田 英俊 京都府立嵯峨野高等学校, 公立学校指導教諭
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Project Period (FY) |
2015
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2015)
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Budget Amount *help |
¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 2015: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
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Keywords | 人形浄瑠璃 / 思想教育 / 女学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
昭和十年に発会した財団法人大日本浄曲協会は、女学校を主たる対象として人形浄瑠璃を無償上演し、それにより情操教育に資することを主たる事業とした。その際、協会側は最も教育的な三十数題を、女子教育の観点から選定して上演し、鑑賞に当たっては、協会の使命と浄曲精神についての講話、人形浄瑠璃の観方についての解説等を行った。これを鑑賞側から捉えると、芸術鑑賞に思想教育が影響を及ぼすということになる。この実態および内容を探ることが、本研究の目的である。 会の機関紙「浄曲新報」には、寄付上演が行われた各学校生徒の感想文が掲載されている。その数は女学校にして8校、女生徒数にして232名に及び、また、鑑賞や感想文に対しての教師や主催者側からのコメントも併載されている。これらを分析検討することにより、思想教育の具体的な項目と、それがどのように人形浄瑠璃鑑賞後の感想文に反映されたかを、解明することが可能になる。また、日本文化の対外宣揚という施策の実行を設立要件として、発会の前年に設立された国際文化振興会との関わりを考察することにより、思想教育の背景となった国家主義の様相も明白となる。 上記の目的と方法に基づいた研究の結果、以下の点が明らかになった。まず、演劇界における戦前とは、政府が非常時局と位置付けた昭和12年支那事変以前を指すということである。そして、主たる対象である生徒感想文には、国粋芸術として日本精神を体現、世界有数たる日本芸術の世界伝播、等と政府の対外積極策が表現されており、思想教育の効果が示されていた。その一方で、人形浄瑠璃(義太夫節)そのものに関しては、現代青少年が抱く感想と大差のない内容であったことにより、芸術鑑賞に対する影響は、情操教育に特化した形で、当時の思想を如実に反映したものであったことが判明した。
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Report
(1 results)
Research Products
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