中世における山王礼拝講の基礎的研究-叡山文庫所蔵関連文書との比較検討を通じて-
Project/Area Number |
15H00035
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
史学
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Research Institution | 延暦寺学園 叡山学院 |
Principal Investigator |
長谷川 裕峰 延暦寺学園 叡山学院, 僧侶
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Project Period (FY) |
2015
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2015)
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Budget Amount *help |
¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2015: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Keywords | 梶井門跡承円 / 日吉八講 / 日吉御幸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、まず叡山文庫所蔵「山王礼拝講」関連文書の悉皆調査が第一の目的であった。この山王礼拝講とは、現在にまで続く比叡山延暦寺の重要な行事で、延暦寺一山住職が日吉大社へ出向き、神祇法楽として法華八講を勤仕する法要を指す。有名な法会であるにもかかわらず、これに関する専論は、明治期以降から現在へ至るまでの経緯を紹介した論稿が一本あるに過ぎず、中世における成立・変遷は、全く誰も論じていないという研究状況にあった。 そこで叡山文庫に残る関連文書の悉皆調査を実施し、多数の史料を検出することができた。その成果を踏まえて、「山王礼拝講の成立に関する一考察」(『叡山学院研究紀要』38、2016年)を執筆した。ここでは、山王礼拝講の成立に大きく関与した梶井門跡(現在の三千院門跡)について詳しく触れ、青蓮院門跡との対抗関係の中で法会が整備されていく過程を明らかにした。 さらに、当時の様子が描かれた叡山文庫所蔵の承久元年「日吉御幸御八講記写」の検討を進めることで、延暦寺における法華八講の教学的発展に言及できることが判明した。今後、改めて所蔵者の許可を得て、翻刻史料として紙面に上梓する予定である。これは、山王礼拝講に限らず、延暦寺の論義法要そのものを考察対象となすことの可能な史料が現存することを示しており、既存の活字史料と比較検討しながら、「中古天台」と呼ばれる世界観の一端が解明される糸口を発見したことを意味する。 また、本研究の悉皆調査によって「礼拝講縁起」の史料的分析が困難であることも分かった。この縁起は様々な由緒書に登場するが、上記の論文で示した門跡の対抗関係を踏まえているとはいえない。叡山文庫に現存する史料は、この縁起を再生産するものばかりであり、史料的根拠として挙げられるものは無いと判断するに至った。 今後は、以上の成果を踏まえ、山王礼拝講が全国展開したと考えられる「山王講」と延暦寺の論義法要との関係を中心に、中世における天台の教学的変遷過程を明らかにする必要があると思われる。
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Report
(1 results)
Research Products
(9 results)