Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的 本研究では, 大学生のさまざまな精神的不健康の問題に対応可能な治療プログラムの開発および効果検討を目的とし, 抑うつ, 不安, 怒りといった精神的不健康を抱える大学生に対し, 集団形式のアクセプタンス&コミットメント・セラピー(G-ACT)の無作為化比較試験を行う。 研究方法 はじめに, 本邦においてG-ACTを実施した先行研究(入江他, 2015)を参考に, 申請者および認知行動療法を専門とする臨床心理±2名の計3名によって, 6回のセッションからなる大学生を対象としたG-ACTのプログラム開発を行った。 次に, 大学生17名のうち, 9名(男性4名, 女性5名, 平均年齢19.6±1.24歳)を介入群, 8名(男性1名, 女性7名, 平均年齢20.8±1.16歳)を統制群とし, プログラムの効果検証を行った。介入は4名のグループと5名のグループに分け, 2クール実施した。プログラムは, 精神的健康の改善または増進を目的として募集され, 特に除外基準を定めないものであった。 研究成果 一般線形混合モデルを用いた解析の結果, プログラム終了時点および終了1ヶ月時点において, 介入群は統制群よりも精神的健康度が有意に高く, G-ACTは精神的健康の改善および増進に効果を示した。さらに, G-ACTの実施よって獲得が期待される心理的柔軟性についても, 介入群は統制群よりも向上が認められ, 今回開発されたG-ACTは介入手続きとして成立していたことが伺える。しかしながら, G-ACTの効果として期待される行動の活性化については群間で有意な差が認められず, 実生活の変化は不明瞭であった。本研究で開発されたプログラムはマニュアル化されているため他大学でも利用可能であり, 本邦の大学生の精神的健康の管理を行う上で重要な資源となる。一方, G-ACTが精神的健康の改善および増進にとどまらず, 実生活を改善する効果をもつ介入手続きとして成立するよう, 今後プロトコルの改良および効果検証を実施していく必要性が残されたといえる。
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