Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 犯人の活動拠点(住居, 職場等)推定において, 日本の犯罪を対象とした空間分布法(単一地点・領域を拠点可能性が高い地点・領域と推定する方法)と確率距離法(複数の拠点可能性が高い領域を推定できる方法)による推定精度を比較し, これまでに日本の犯罪を対象として検討されてこなかった確率距離法について, 推定の効率性と日本における有効性を検証することを目的とした。同時に, 拠点推定の精度に影響する要因として近年研究が増加している「犯行地点の数」を考慮した分析を行うことで, 拠点推定において主要な2つの要因(推定手法, 犯行地点の数)に関する包括的な検討を行った。 2004~2013年に東北6県で検挙された住宅侵入盗(150名)のデータを用いて, 空間分布法(サークル仮説の中心, 地理的重心, 犯行地点座標の算術平均および中央値 : 4手法)と確率距離法(直線, 二次関数, 対数, 指数 : 4手法)の推定結果を, 犯行地点の数を考慮ながら比較した。推定結果の精度を比較する指標としては, 「拠点の可能性の高い地点から実際の拠点までの距離(誤差距離 : error distance)」および「拠点の探索に要する領域の面積(サーチエリア : searched area)」の2種類を用いた。 その結果, 誤差距離による比較では空間分布法と確率距離法に明確な精度の差は認められなかったが, サーチエリアによる比較では, 空間分布法に比べて確率距離法の精度が高い可能性が示された。また, 空間分布法と確率距離法のいずれについても, 推定に用いる犯行地点数と精度の間には関連のないことが示唆された。 以上の成果から, 日本の犯罪に対する確率距離法の有効性が示された。さらに, 本研究の実施にあたり開発した解析プログラムは, 今後, 他の研究者および実務家が, 空間分布法と確率距離法を用いた拠点推定を実施する際に利用することが期待される。
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