Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的 : 近年, 死の実感が社会の様々な面で抜け落ちた中で, 死に向き合うことで死生観を育み, 生きる意味を見出し, 今, 生きている一瞬を大切にすることができる(長寿社会における生涯学習の在り方について, 2012)とされている。ところが, 学校現場で死について語ることは, 様々な捉え方があることに加え, 生徒の心の様子がわからないこともあり, なかなか行われる機会はない。一方, 福祉や看護を学ぶ高校生は, 実習現場に於いて, 加齢や疾病により不自由な暮らしを送る人々や死にゆく人々との出会いを通して, 死について考え, 語り合う機会を持つことがたびたびある。 今回, 福祉・看護を学ぶ高校生は臨地実習含む学校教育の中で, 死を巡る学びを重ねているのではないかと考えた。生徒たちの理解を深め死生観を育む教育の手掛かりにしたい。 研究方法 : 普通科高校生と福祉・看護を学ぶ高校生を対象に, 平成27年9月から11月にかけて2つの手法で調査を行った。平井(2000)の臨老式死生観尺度を使用し, 7つの因子によるアンケート調査を行った。正規性を確認できなかったので, Kruskal-Wallis検定を行い, 3群の比較を行い, 多重比較を行った。インタビュー調査は, 4~5人で1組のグループに対し, フォーカスグループインタビューを行った。回答のあったものをデータ化し, 内容ごとにコードを付け分類し, カテゴリー化した。 研究成果 : アンケート調査からは, 有効回答数普通科98名, 衛生看護科108名, 福祉科88名の回答を得た。多重比較の結果, 「解放としての死」で普通科と福祉科, 「死への関心」で普通科と福祉科, 「寿命観」で普通科と福祉科に有意差(p<0.05)が見られた。インタビュー調査からは, 死生観に影響を与えたものについての質問に対し全科に共通するものは, 『身近な人との死別体験』であり, 福祉科と衛生看護科の生徒は, 『実習や授業によるもの』があがった。そして, 生徒自らの人生に重ねて死生観を捉え, その心は社会へも目が向いていることが示唆された。
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