Outline of Annual Research Achievements |
総合的な学習の時間や美術科の学習は、一般的な事例から推測すると、学習内容はアクティブであり、主体的に生徒が取り組んでいるが、それが具体的な手立てや指導法をもって実践され、汎用的能力を育てる基盤が充分に備わっているとは言い難い。その課題を解決するためには, まずは汎用的能力または創造的思考の基盤となる資質・態度を定義し、そして, 効果的な指導・支援法(鑑賞やワークショップ型の学習体験)を確立する必要があると考えた。以下の計画にそって, その効果を検証した。 ○平成27年4月~6月 地域を題材とした21世紀型美術科協働プロジェクト学習指導案づくり ●プロジェクトチームで議論しあいながら、メタ認知や批判的思考、問題解決、意思決定のスキルを高めさせることをねらいとして, 題材や指導法を計画した。 ○平成27年7月~8月 導入段階及び生徒の活動の様子を両面から分析 ●鑑賞授業では, 資料提示や発問により, 多角的多面的思考や批判的思考を促し, また, 思考ツールの活用により, 議論の過程を可視化し, 論点を明確にして思考させた。そして, ブレーンストーミング・KJ法によってチームでプロジェクトを発想・構想させた。また, 情報を整理する際, 思考ツールを活用させた。 ○平成27年9月~10月 導入段階で明らかになった課題を踏まえ、展開段階へ ○平成27年11月~12月 展開段階の交流活動・制作等、生徒の活動の様子、ワークシート, アンケート等を分析 ○平成28年1月~2月 研究成果発表のための準備 ○平成28年3月 研究紀要や学会における研究成果の発表、授業用教材など資料の製作 アンケートの中で90%の生徒が街のデザインについて興味が高まり, 読解力が高まり, また, 鑑賞授業は発想・構想に役立ったと回答した。そして, 95%の生徒が, グループで話し合うことで, 考えが広がり, 新しい発想が生まれたと回答した。鑑賞における読解・分析・批評は思考ツールの活用により, 読解・分析のポイントが明確化され, 思考が可視化されることで, 各自の見方や感じ方等, 批評の交流を円滑にする。交流の中で多様な感じ方や意見に触れ, その学習活動の中で, 生徒は視野を広げたり, 深めたりしていること, その視野の広がりや深まりが構想・表現に活用され, その後の探究に導かれることが確認できた。本研究で確立した指導・支援法は論理的・批判的・創造的思考力等の汎用的能力を高める上で, 効果的であることがわかった。
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