Outline of Annual Research Achievements |
本研究は, 筆者のこれまでの研究成果をふまえ, ICTを活用した高等学校数学科の図形領域の授業の実践を通して, 生徒たちが, 「黒板での授業」, 「ICT画面での表示や操作」, そして「具体物」を直感的にとらえ, その中のおもしろさ, 不思議さ, 美しさといった点に着目して生徒たちが能動的に考え, その先を探究するようになるかについて検証したものである. 本年度は, 本校1年生, 数学Aの「図形の性質」の授業に焦点を当て、上記「黒板での授業」「ICT画面での表示や操作」「具体物」の3点を絡めた授業展開を行った. まず「具体物」を「定規」や「コンパス」を用いて作図した物とし, それらをこれまでと同様「アナログ的数学的活動」ととらえた. そしてそのあと, コンピュータ等ICT機器を用いた「デジタル的数学的活動」を行った. 今回特に焦点をあてた活動は「立体図形」の「正多面体の存在条件」である. 教科書では, 「(1)1つの頂点に集まる面の数が3以上である. (2)1つの頂点に集まる角の大きさの和は360°より小さい. 」と記述してあり, (1)かつ(2)がその存在条件であるが, この「立体図形」のところでは, 先に, コンピュータを用いた「デジタル的数学的活動」を行った. しかし, 生徒たちにとっては今ひとつピンと来ていない感じがしていた. そこで「具体物」となる「ポリドロン」を生徒たちに提示し, 実際に手で触れて様々な正多面体を作ってもらった. すると正三角形や正四角形(正方形), そして正五角形ではひとつの点のまわりに3つをつなげ, そこから立体を作り出そうとして先へ進めるが, 正六角形では, ひとつの点のまわりに3つをつなげただけで360°になってしまい, そこから先, 立体図形の作成へは進むことができなかった. ここで生徒たちから, 「なるほど, そういうこと. 」とか「教科書の書いてある意味がとても良くわかった. 」また「ポリドロンとパソコンが両方あって, 手で触ったり画面の中で立体を動かしたりしてとても良く解った. 」と言った感想が寄せられた. そしてしばらくすると, 正十二面体のポリドロンの一つの面に, 正八面体のポリドロンを, まるで知恵の輪のように入れる生徒が何人か出てきた. そしてある向きによりギリギリのところで入らない形を「厚み」を考えなかったらどうだろうと考え始める生徒が現れた. 彼は数式により「厚みがなければ通る」ということを示した. さらに別の生徒は, 授業中に配付した正多面体の展開図の紙を用いて立体を作り, それを部分的に切断した模型を何個も作って実際の切断面の形を考える生徒も現れた. 今回の研究の目的にあるように, 生徒たちはまさに「能動的」に考え、さらに「その先を探求する」姿勢が見られたという成果が得られた.
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